【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
シルヴィーはあざとすぎるアデラールを見て呆気にとられていた。
頭の回転が速いというのは、彼のような人のことを言うのだろう。
どんどんと話がずれていき、先ほどまでシルヴィーと買い物に行く気満々だった王妃も、アデラールの巧みな話術により「なんだかあの人の顔を見たくなったわ」と、言って部屋から出て行ってしまった。

二人きりの部屋の中、気まずい空気が流れる。
そう思っているのはシルヴィーだけかもしれないが。

(こうして二人きりになるのは久しぶりよね。意図的に避けていたのもあるけれど……)

いつもはホレスやリサが一緒にいるため、違和感を覚える。


「シルヴィー」

「ひっ……は、はい!」


大きく肩を揺らして返事をしたシルヴィーを見て、アデラールは困ったように笑みを浮かべて一歩後ろに下がる。


「紳士的に接しているつもりだったんだけど、シルヴィーへの気持ちが強く出過ぎていたのかな?」

「…………いえ」

「無理をしなくて大丈夫だよ。このままだと母上の言う通り、嫌われてしまうね」


誤魔化して答えても表情を見て察しているのだろうか。
少し距離を取るようなアデラールの行動になんとなく気まずかっただけなのだが、アデラールにはそう見えていたのかもしれない。
怖いというよりは、受け止めきれないというのが正直な気持ちだった。
今まで奪われ続けていたシルヴィーはこそばゆい気持ちに戸惑うばかりだ。
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