【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
何故かこの件が美談になっているようだが、内情はまったく違うことをシルヴィーは知っている。
(ヤ、ヤリ逃げしただけなのに……!)
リーズにアデラールが話したということは、このような話にした方が都合がいいということだろうか。
ここは空気を読まなければならないとシルヴィーは黙って聞いていた。
だけど嘘をつくのも心苦しいため、そんな狭間で揺れていた。
シルヴィーがワナワナ震えていると背中に感じる圧力。
恐る恐る振り返ると、アデラールが笑みを浮かべている。
彼は何も言っていないのに〝何も言わないよね?〟と、圧を感じる。
シルヴィーはブンブンと首を縦に振り頷くしかなかった。
アデラールは話題を変えるために王妃とマリア、シルヴィーと共にドレスを買いに行くことを伝える。
するとリーズは大興奮で目を輝かせた。シルヴィーの手を握りブンブンと振っている。
口パクで何度も『ありがとう』と、言っていた。
それから華やかなドレスやワンピース、帽子に靴と店のものを買い占める勢いで購入していく。
アデラールになぜかと聞くと「母上に先を越されたくないから」と、キラキラの笑顔で言っていた。
「私の店のドレスが王妃陛下と王女と未来の王太子妃に……!」
リーズはシルヴィーの体のサイズを計りながら涙を流していた。
シルヴィーもまさか自分が働いていたブティックのドレスを着ることになるとは思いもしなかった。