【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
今日は早起きをして魔法の訓練をしたホレスはスヤスヤと眠ってしまう。
シルヴィーの膝の上で眠るホレスの寝顔は天使のようだ。無意識に笑みが漏れる。
こうなると一時間半くらいは起きないだろう。
このまま馬車で城に帰ればちょうどいいかもしれないと思っていると、アデラールがあることを提案する。


「折角だからこのままデートをしようか?」

「デート、ですか?」

「ホレスが休んでいる少しの間だけだよ」


人差し指を口元に当てたアデラールはウインクをする。
シルヴィーがどうするべきかと戸惑っていると、アデラールは「僕もシルヴィーとホレスが過ごしていた街を見てみたいんだ」と、アピールをしている。


「こんな機会めったにないだろうから行ってみたいなぁ」

「……!」

「次にいつ二人の時間がとれるかわからないし、シルヴィーとのデート……してみたかったんだけど」


アデラールが憂いを帯びた表情で呟く。
あまりにも悲しそうに言うので、シルヴィーはアデラールの提案を了承するしかなかった。

すっかり熟睡しているホレスをリサと近衛騎士たちに任せて、街へ向かう。
一時間ほどのデートとなるのだが、アデラールと二人きりだと思うと何を話したらいいかわからない。
アデラールはいつも通りに微笑んでおり何を考えているのかはわからない。
それからベンが働いていたパン屋へと向かう。
懐かしさに感動しているとパン屋の奥さんがシルヴィーを見て驚愕してパンを落としてしまった。
泣きながら母とホレスのことについて聞いてくるが、最終的には赤く染まった頬を押さえてアデラールとの恋物語について口にする。

(この話……随分と浸透しているのね)
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