【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
脚色された物語は街全体に広がっているようだ。
お祝いだからと大量のパンを渡されて、シルヴィーは街の人たちと久しぶりに挨拶を交わしつつ、今までお世話になったお礼を口にしていく。

アデラールを見てうっとりする女性たちとは違い、なぜかガクガクと震えている男性たちの姿。
シルヴィーが話しかけてもよそよそしく返事をするだけ。
そういえばレオンやベンも最近はシルヴィーと一定の距離をとっているような気がしていた。

(……どうしてかしら)

こんな反応をされたことはないため、シルヴィーは戸惑うばかりだ。
彼らがアデラールに睨まれているとも知らずに、シルヴィーは首を傾げる。
彼らと別れてシルヴィーは再び歩き出す。


「シルヴィーは随分と街の皆に慕われているんだね」

「そうでしょうか?」

「うん、そう思うよ。君の人柄を考えたら当然かな。僕も……君の優しさに惹かれたんだから」


アデラールの声が少しだけ低くなったような気がした。
しかし慕われているというのはアデラールの方ではないだろうか。
アデラールにと大量の野菜やフルーツ、パンに雑貨など色々な贈り物が積み上がっていた。

アデラールがどこか建物の影を見て合図を送る。
すると荷物を持ち、サッと去っていく護衛たちの鮮やかさに目を奪われていた。
手ぶらになった状態でカフェに向かおうと提案してくれる。
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