【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜


「わ、わたしの方こそ、アデラール殿下にひどいことをしませんでしたか?」

「君が僕に?」

「はい……あの状態でしたから。嫌われるのは……わたしの方かと」


シルヴィーがモジモジしつつもそう問いかけると、アデラールは珍しく噴き出すようにして笑っているではないか。


「ア、アデラール殿下?」

「ははっ、君は本当におもしろいことを言うね」


シルヴィーは首を傾げつつ、アデラールが笑っているのを眺めていた。


「ひどいことなんてありえない。君はただ酔って僕の服を引きちぎって泣きながら直して、その後にまたシャツを引きちぎってから馬乗りに……」

「わああああっ!」


どうやらお酒の力も借りてやりたい放題だったようだ。
自分の予想よりも遥かに上を越える暴挙に思わず叫んでしまう。
両手のひらで顔を隠しながら恥ずかしさに身悶えていた。

(今すぐに穴の中に入りたいっ!)

下唇を噛みながら今すぐ逃げ出したい気持ちを押し込めていた。


「そこで僕が君を守るって約束したんだよ?」

「……約束、ですか?」

「うん、そう約束したんだ。だから僕は君を守るよ」


アデラールはそう言いつつ笑みを浮かべている。
時折、いつもの優しい笑みとは違う。少しだけ暗い感情が含まれた笑みだ。


「どうしてそこまで……?」

「シルヴィーは僕の心を動かしてくれた初めての人だから」

「……!」


シルヴィーは目を見開いた。

(も、もしかしてわたしに執着しているのって……酔っ払った時の姿がやばすぎたからでは!?)
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