【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
王太子として淑やかな令嬢たちとばかり話していたから、酩酊状態のシルヴィーに襲われて何かに目覚めてしまったのだろう。

(……アデラール殿下、可哀想に)

シルヴィーからアデラールに送られる哀れみの視線。
それにホレスもいることで、シルヴィーから逃れることができなかったのかもしれない。

(こうして優しくしようとしてくれているけれど……本当は)

なんだかアデラールが可哀想に思えてしまい眉を寄せつつ考えていた。

(アデラール殿下なら選び放題だったのに……)

おそらく彼は責任感も強いのだろう。
でなければ立場もなく平民のシルヴィーを選ぶことは絶対にしないはずだ。
家柄も容姿も特段よくなければ誇れる特技もない。
彼につり合っているかと言われたら、誰もが違うと答えるだろう。


「……アデラール殿下に申し訳ないです。夜会の件でわたしを選ぶしかなくなってしまったんですもんね」


その言葉を聞いたアデラールは目を見張る。


「君は何もわかっていないんだね」

「どういう意味でしょうか」

「シルヴィーは僕が……いいや、なんでもない。今は怖がらせてしまうから」

「……!?」

「時間はあるから、少しずつわかってくれたらいいよ。僕がどれだけシルヴィーのことを愛しているのか」


当然のようにそう言われたことでシルヴィーの頬が赤らんでいく。
異性からそのようなことを言われたことがないため、免疫がないのももちろんだが『もう恋をしない』と決意してここまできたのに、いつのまにか絆されそうになっている。
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