【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
彼との妄想に耽ったところで、埃まみれの現実は消えはしない。
ミリアムは震える拳を握りしめていた。いつまで経ってもあの頃の生活には戻れない。

それから顔を隠しつつ、買い物に出かける。自分で買わなければ何も手に入らない。
子爵の娘だなんて思えない。街では三年経ってもシルヴィーの名前ばかり。
『シルヴィーお嬢様がいてくれたらこんなことにならなかった』
『シルヴィーお嬢様は本当に立派だった』
耳障りな声が届くたびにミリアムは苛立ちを隠せない。

(シルヴィーシルヴィーシルヴィーッ、その名前は二度と聞きたくないっ!)

わずかなお金でパンやハム、チーズを買う。繰り返される絶望の日々。
そこでさらにミリアムに追い討ちをかける出来事が起こる。

買い物を終えて、ミリアムが両親が待つ狭くて汚い屋敷へと帰ろうとした時だった。


「あの噂、聞いた?」

「聞いたわ。さすがシルヴィーお嬢様よね」

「本当本当、幸せになってくれてよかったわ。まさかシルヴィーお嬢様が公爵様の養女になって王太子妃になるなんて!」

「マリア王女様や両陛下にも気に入られているんですって! シルヴィーお嬢様はすごいわ」

「…………は?」
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