【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
──今日はわたくしがすべてを捨てる日。

仮面をつけて参加する仮面舞踏会は、身元や顔を隠して参加できる秘密の社交場。
その招待状を握りしめて、シルヴィーは暗闇の中で怪しく光っている建物を見上げながらゴクリと唾を飲み込んだ。

仮面をつけていなければ、今にも倒れてしまいそうなほどに緊張している。
先ほどからシルヴィーの隣を楽しげに会話しながら通り過ぎていく男女は余裕があるように見えた。

(覚悟を決めましょう……わたしは明日から貴族ではなくなるのだから)

シルヴィーは震える足を前に出して歩き出した。
招待状を見せて、明るく煌びやかな会場に目を奪われつつも、シルヴィーは一歩一歩足を進めていく。

(すごい……! とても綺麗……)

ぼんやりと浮かぶ光が幻想的に見えてしまう。
十一年振りのパーティーだからか緊張して固くなる。
仮面をつけた男女が身を寄せ合いつつ絡み合っているのを見て、シルヴィーはサッと目を逸らした。刺激が強すぎたためだ。

シルヴィーが目立たないようにと会場の端を歩いていくと、クスクスと嫌な笑い声が聞こえてくる。
こちらを見て笑っているように見えたのは気のせいだろうか。
咳払いをしつつ、気を取り直すために歩き出す。
こんなところで動揺していたら逆に目立ってしまう。
< 28 / 210 >

この作品をシェア

pagetop