【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
そんなタイミングでウェイターがグラスを差し出してくれた。
シルヴィーは戸惑いつつも勧められるがまま手を伸ばす。
匂いを嗅ぐとわずかにアルコールの匂い。この国では十八歳で成人となる。
もちろんお酒も飲むことができるのだが、シルヴィーは一度も飲んだことはない。
グラスを掴む手を止めて、シルヴィーは母に言葉を思い出していた。


『シルヴィー……お酒はあまり飲み過ぎたらダメよ?』

『お母様、それはどうして?』

『あまり覚えてはいないんだけど酒癖が悪いらしいの。もしあなたがわたしに似ていたら……』


普段からかなりしっかりしている母が酒癖が悪いとは思えないし、想像もできない。
それに母に似るとも限らないと、シルヴィーはグラスを手に取った。
薄ピンク色の液体に下から上へと登る泡を眺めつつグラスを傾けると、シュワシュワと刺激が喉を通り抜けていく。
カッと熱くなっていく体にシルヴィーは小さく息を吐き出す。

(これがお酒……? 体に急に熱くなる感じだわ。飲み過ぎなければ大丈夫よね)

初めての感覚にシルヴィーは戸惑いつつも気分が高揚していた。
空になったグラスをウェイターに返す。
かなり強い酒なのか、シルヴィーが酒に対して弱いだけなのか。
ふわふわとした浮遊感に気分が良くなってくる。


「お嬢様、もう一杯いかがですか?」

「えっ、あの……」

「こちらはとても飲みやすいですよ」

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