【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
「反省してくらはーーーい」
「──ギャアアアアアッ!」
そう言いつつシルヴィーは腕を何度も何度も尻に向かって振り下ろす。
バチンバチンと音が聞こえたところで勢いよく扉が開いた。
光が漏れたことでシルヴィーはゆっくりと首を傾ける。
全顔が隠れる仮面をつけているシルバーの髪の青年がこちらに向かってくるではないか。
「大丈夫かい!?」
「…………はぁ、大丈夫じゃない」
「……え?」
「どうみたって、らいじょうぶじゃないわっ!」
シルヴィーはどうしようもない気持ちを八つ当たりするように声を上げた。
その間にもバランスが取れずに体はブンブンと揺れていく。
再び腕を上にあげると仮面の青年はシルヴィーの腕を押さえつけた。
どうやらラディング侯爵はシルヴィーが容赦なく振るった鞭の痛みに耐えられず、気絶してしまったようだ。
シルヴィーは不機嫌そうに顔を歪めながら仕方なく鞭から手を離す。
「すまない、いろいろと手間取ってしまって……」
「…………はい?」
シルヴィーはなんとか視線を青年へと流す。
この時、思考が朦朧としていて青年が何を言っているのか理解できなかった。
なんだか体がふわふわして気持ちがいい。
そんな時、シルヴィーの視界に映ったのは青年が着ているコートやベストに施された美しい刺繍だ。
(なんて素敵なレースや刺繍なのかしら……)