【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜

シルヴィーの目から自然と涙がこぼれ落ちる。
先ほどまでは侯爵への怒りでいっぱいだった。
その後には服を壊してしまった焦り。
今度は悔しくて悲しくてたまらなってしまう。
感情の起伏が激しくて自分でも止めることができない。


「今度は僕が君を助けるよ。だから泣かないで……?」


視界は歪んでぼやけていたけれど、彼が優しい笑みを浮かべているのだけはよくわかった。
優しく頬に流れていた涙を拭う指先。

(どうしてわたしを助けてくれるの……?)

こんなふうに誰かに手を差し伸べられたことはあっただろうか。
温かい言葉は今のシルヴィーの心に重く響いた。


「……ほんとに?」

「ああ、本当だ。君を守る。約束するから……」

「どうして、わたしを?」

「次に会えたら、そうしようと決めていたんだ」


青年はシルヴィーと会ったことがあるのだろうか。
優しく頬に添えられた手は温かい。
誰だかはわからないが、こうして味方をしてくれる人がいることが心から嬉しいと思う。

そう思うのと同時にシルヴィーは夢から醒めるようにあることを悟った。
今晩、この人を逃したらもうシルヴィーは恋をすることはできない。

(……これが最初で最後の恋になるのね!)

シルヴィーの中でずっと押し込めていた感情が爆発する。
誰かに愛されたい、必要とされたい……その強い思いが頭を支配する。
シルヴィーは彼を逃がさないようにとぐっと足を絡めた。
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