【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
「でも今は医師を呼んでくるから、ちょっ……!」


シルヴィーは青年の言葉を遮るように覆い被さってから微笑んだ。


「不束者ですが、よろしくお願いいたします」

「……っ!?」


丁寧な言葉とは裏腹に、シャツを剥ぎ取ったことだけは覚えている。
大きく見開かれたライトブルーの瞳と左目の泣きぼくろ。

『大丈夫、これからはずっとそばにいるから……』

そこでシルヴィーの記憶は途絶えてしまった。


* * *


久しぶりに感じる人肌の温もりにシルヴィーは幸せを感じていた。

(またお母様と一緒に過ごせるなんて夢みたいだわ)

思い出すのは幼い頃、母に抱きしめられていた懐かしい記憶。
すると何故か肌寒さを感じたシルヴィーはシーツを手繰り寄せるために手を伸ばす。

(今日はまず洗濯をして掃除もしないと。領地の農作物のチェックに水害の規模を調査して、食料の確保……それから彼らにバレないようにお金を貯めてレースを編まないと…………ああ、でももう何もしなくてもいいんだわ。だって、わたしは今日から平民になるんだから)

そう思い、自分があの夜会の後にどうやって店に帰ってきたのか思い出せないことに気づく。

(あれ……? 昨日の記憶がないんだけど、どうやって店に帰ってきたのかしら)
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