【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
ひとまず彼女が無事なことに安堵していた。
医師が呼ぶからと伝えるも、聞いているかはわからない。
ベッドに寝かそうとするもののアデラールまで引っ張られてしまう。
先ほどまでの清楚で無垢な彼女とはまるで別人だった。

そんな細腕な彼女のどこにそんな力があるのか。仮面を剥ぎ取ったり、シャツを破ったりとやりたい放題だった。
アデラールも毒のせいか、全身の感覚が鈍っているため彼女の暴走を止めることはできない。されるがままだった。
それからじっと服を見つめている。
『あの時と同じだわ。惚れ惚れするデザインですねぇ』
『あの時もこうして……』
そのセリフからもわかる通り、やはりずっと探していた彼女なのだと実感する。

そんな時、運命のいたずらなのかレースのジャボが千切れてしまう。
けれど十一年前と同じように魔法で直してくれたことで確信した。

(どうして見つからなかったんだ。彼女はこうして魔法を使っているのに……!)

酔っているせいか、感情が読めずに次は瞳に涙を浮かべている。
『誰か助けて……っ』
つらいことがあったのか。ずっと耐えてきたのだろうか。
今度はアデラールが助けてあげたい。守ってあげたいと伝えていく。
アデラールの人生には彼女が必要なのだ。

溢れる涙を拭う。美しいラベンダー色の瞳が揺れ動いていた。
彼女の頬に手を置いて口付けようとした瞬間、視界がぐるりとひっくり返った。
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