【完結】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
「シルヴィー、僕と一緒に来てくれるだろうか」


こう言われてしまえば、シルヴィーはついていくしかないのだろう。
シルヴィーが頷くと、アデラールは安心したように息を吐き出した。


「あの……っ、お願いしたいことがあるんです」

「何かな?」

「わたしはどうなっても構いません! だから母とホレスだけは助けてくださいっ」


今はホレスが高熱で苦しんでいる。王家ならばお抱えの医師がいるに違いない。
きっとホレスの熱の原因もわかり、適切な処置をしてくれるはずだ。
これでホレスは助かる。たとえ二度と会えなくてもホレスが笑って生きていてくれるのならそれでいい。

シルヴィーの目から涙がこぼれ落ちる。
するとアデラールはシルヴィーの頬に流れる涙をそっとすくう。優しい指に懐かしさすら覚える。

(……あの時と同じだわ)

今になってぼんやりと思い出すことが夜会の時の記憶。
ライトブルーの瞳は優しくシルヴィーを見つめている。
アデラールはあの時のことを怒っているわけではないのだろうか。
どうしてこんなにも穏やかに笑っているのか、その理由がわからない。


「僕はね、約束通り君を助けにきたんだ」

「…………約束?」


シルヴィーが何がなんだかわからずにいると苦しそうな呻き声が耳に届いた。
彼との会話に気を取られていたせいか、ホレスが先ほどよりも荒く息を吐き出していることに気づかなかった。
しかし先ほどよりも明らかに熱が上がっている。


「──ホレスッ! ホレス、しっかりして!」
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