そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
……銃声…!?
一瞬遅れて、背筋を氷でなぞられたみたいに全身が冷えた。
心臓が跳ね上がって、血の気が一気に引いていく。
やっぱり。
私達に、“普通の高校生”みたいな時間なんて、最初から与えられてなかった。
息を殺したまま、視線だけで周囲を探る。
……一発だけ。
でも、そこにいた人の気配はもうなかった。
……襲いに来た、わけじゃない?
でも、たった一人でこんな場所に来る理由が思いつかない。
ここに留まっていれば、増援が来る可能性だって高い。
「蓮、ここから離れよう」
小声で告げると、蓮もすぐに状況を察したみたいに頷いた。
そのまま屋台の方へ戻って、人混みに紛れるように走り抜けていく。
はぐれないように、私は咄嗟に蓮の手を掴んだ。
さっきまでは蓮が私の手を引いていたのに。
今は、私の方が必死に引いている。
指先に伝わる体温が、さっきまでのキスが夢じゃなかったって証拠みたいで。
それを手放したら、全部一気に崩れてしまいそうで。
離したくない。
花火の音が背後で弾けるたび、さっきの乾いた銃声が脳裏に重なる。
……違う。
これは、夏祭りの音。
ただの、花火。
そう言い聞かせても、背中をなぞる悪寒は消えてくれない。