そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
「……っ、はぁ……」
息が苦しい。
人混みを抜けて、提灯の明かりがまばらになって。
というか、走りにくい……!
華やかな浴衣が、今はただの足枷にしか思えなかった。
裾を踏みそうになりながら、それでも必死に足を動かす。
「……こっち!」
人混みの隙間。
屋台と屋台の間に、地元の人しか使わないような細い裏道が見えた。
表は、一般人を巻き込んでしまう可能性があって危険すぎる。
蓮の腕を引いて、強引に方向を変えた。
人の流れから外れて建物の影に身を滑り込ませると、祭りの喧騒が一気に遠のいた。
花火の音も、少しだけ遠くなる。
そこを抜けた先は、少し開けた裏の広場。
屋台もなく、人影もほとんどない。
はずなのに。
──ガン、という鈍い音。
それは、乾いた銃声とは違う。
もっと重くて、生々しい音。
反射的に身構えた、その瞬間。
「……これで何人目?…はい、こいつ回収していいよ」
聞き慣れた声。
でも、すごく淡々としていて、感情のない、冷たい声。