そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
「俺、そんな簡単に死なねーよ」
……なんで。
なんで、そんなふうに言えるの。
強がりだと分かっているのに、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
視界が、また滲んだ。
怖い…ただ、それだけ。
失うのが、怖い。
だから誰かに肩入れするのは嫌だったのに……っ。
そっと、蓮の手が私の後頭部に回される。
逃がさないように、でも優しく引き寄せられた。
蓮の体温が、胸元に伝わってくる。
その温かさに触れて、少しだけ震えがおさまった。
「……大丈夫」
耳元確かめるように。
私は、蓮の服を掴んだ。
溢れた涙を指でそっと掬われる。
今はただ、この体温のそばにいたい。
それだけでいい。
そう思いながら、しばらくの間私は蓮を抱きしめたまま動けずにいた。
その横で律がインカムに向かって、短く指示を出す声が聞こえる。
「………救急班回して、今すぐ。そう、あと祭りの方も念の為巡回して」
いつか、ちゃんと向き合わなきゃいけない“過去”。
……もう、見て見ぬふりは、できないのかもしれない。
そう思った頃には。
すべてが終わった空に、もう花火は上がっていなかった。
夜だけが、静かに広がっていた。