運命的な出会いには裏がある。
「てか、鮎川さん25なんですね」

「何歳に見えました?」

「あ、でも俺と同じか少し若いかくらいだって思ってました」

「じゃあ、大当たりですね」


 お互いの事について質問をして話して、そのまま30分程ベランダで話し込んだ。

 昼間配達員をしているお兄さんは人懐っこく、笑顔が爽やかなのに、オフに会うと落ち着いた雰囲気で、凄く大人っぽい。

 それでいて薄い唇に軽く煙草を挟んで蒸かしている姿がなんとなく色っぽくて、こんな所で煙草を吸っている男性に魅力を感じることになるとは思わなかった。


「じゃあ、明日午前中ちょっと用事あるので、私はもう寝ます!お付き合い、ありがとうございました!」

「いえ、あ、連絡先交換しません?」

「え?」

「今日仲良くなれた気がしますし、あれなら今度飯行きましょ」


 今夜だけで随分いい感じになってしまって、外は涼しいのに顔が熱い。

 ご飯に誘われただけで大した意味は無いはずなのに、恋愛経験が少ないとこれだけでも激しく期待を抱いてしまう。


「あ、じゃあぜひ」

「それと、敬語もいらないですし、俺の名前、長谷川 暖って言うので、暖って気軽に読んでくださいね」

「だ…、暖?」

「そう。俺も琴葉って呼んでいい?」

「いいけど…」


 この人こういうの慣れてるんだろうなと、直感的に感じた。その綺麗なお顔じゃモテて当然だし、距離感の近い話し方がまた嫌な感じでは無くて、断れなかった。

 本当はこんな風に急に距離を詰められるの私は苦手だ。それなのに嫌じゃない理由が分からない。

 連絡先を交換すると「それじゃ、もう寝るから。おやすみ」と声を掛けて部屋に逃げようとする。

 そんな私に「おやすみ」と言葉を返して、暖はまだベランダで煙草を蒸かしていた。突然始まった関係にまだ私はついて行けそうにない。
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