運命的な出会いには裏がある。
 言葉に詰まっていると暖は私に近付いて「どうかした?」と問いながら私の頬を撫でてくる。

 こんな風に触れられた事なんてない。まるで恋人に触れる様な優しい触れ方。


「暖…、初音と知り合いだった?」

「初音さんって?」


 あの出来事を夢だったとはどうしても思えない。初音がもし知り合いなら今までの事も仕組むのは簡単だったと思う。

 でも何のために私にこうして近付いてきたのかは分からない。


「…居酒屋で初音と話してたよね?」

「ああ、話したよ。同じマンションだから俺が送って行きますよって。声掛けたの。飲みに行ったら困ってそうだったし、見たら琴葉が潰れてたから」


 まだ嘘を吐くつもりらしい。私には暖が何を考えているか分からない。ただの配達員で、ただのお隣さんで、ただ同じジムに通う友人で…。

 そして今は暖が怖い。


「何か不安な事あった?」

「私、起きてたの。さっきの話も聞いてた」

「夢でも見てたんじゃない?」

「暖!」


 どこまでもはぐらかそうとする暖に強く名前を呼ぶと、暖は今までいつもの表情を変えなかったのに、そこで初めて困ったような表情を見せていた。


「初音と協力って何?」


 出来る限り冷静に問い掛けたつもりだったけれど、声が震えていた。事実を確認するのが怖くて、せっかく進みそうだった暖との関係が壊れるのが嫌だった。
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