運命的な出会いには裏がある。
 暗い映画館の一番後ろの端に座る。周りは結構人が居るけれど、なぜかこの列だけ2人席になっていて「壁側か通路側、どっちがいい?」と問い掛けられ壁側を選ぶ。

 暖は私の後に座り、お互い真ん中のドリンクホルダーは使わず端の方にドリンクを置いた。

 映画館は意外と距離が近くて、暖の香水の香りを近くに感じる程だった。


「寒くね?」

「ちょっとだけ」

「これ羽織っとき」


 そう言って暖は自分が着ていたジャケットを私の肩に掛けてくれる。


「え、暖が寒いんじゃない?」

「俺はいつも映画館の中暑いくらいだから大丈夫」


 そんなことされたら簡単にときめくんですけども…!気遣いの神!?

 そんなことを思いながら心臓が早鐘を打っている上にうるさい。近くに居る暖に聞こえないか心配になる。


 徐々に館内は暗くなり映画の予告が始まる。

 背凭れに深く背を預けていて暖も同じように座っていた。それからふと暖の方を見ると暖はこちらを見ている。


「な、何」


 そう問い掛けるとひそひそと静かに話すために耳元に顔を近付けてきて「可愛いなって思って。初デートだから、ちょっと浮かれてる」と心地の良い低い声が聞こえてくる。

 顔が熱くなるのを感じ両手で口元を抑えると、暖はふっと笑みを零してその私の手を掴むと、指を絡めて恋人繋ぎをしてくる。

 まだ恋人でも無いのに、もうそんな感じの甘さを受けている。
< 41 / 61 >

この作品をシェア

pagetop