運命的な出会いには裏がある。
Episode5
 暖の部屋に入るのは二度目だ。

 お酒に酔ったあの日、暖の部屋で休ませてもらって初音との事を聞いたのが一度目。
そして二度目は、自らの意思で入った。
こうなる事も分かっていて。

 玄関のドアを閉めて鍵を閉めるなり、電気も点けず薄暗い玄関先で壁に追いやられ顎を掴まれてそのまま唇を塞がれる。

 高校生ぶりに異性とキスをして、そして久し振りの相手は気になっていた配達員のお兄さんで、お隣さん。

 何度か優しく唇を重ね合わせると、一度止めて至近距離で見つめ合う。

 それから暖が私の顔を見ると、再度ゆっくり唇を重ね合わせて壁と暖の間に閉じ込められるようになる。


「…やば、急ぎ過ぎた」


 そう言いながら少し熱い吐息を首元に零していて私の肩に顎を乗せる。


「琴葉、俺の事どう思ってんの?」

「え…?」

「なあ、こんだけドキドキしてるくせにまだ俺のにはなってくんないの?」


 私の胸元に手を添わせる。

 その声はどこか切ないけれど、期待を孕んだ様なそんな声に聞こえて、本気で私を求めているのだと伝えてきている。


「暖…」

「こんだけずっと俺の事好きで仕方ないみたいな顔してるのに、何で俺じゃだめなん」


 暖でだめ、とかそんな風に思った事は無かったけれど、この"はい"とも"いいえ"とも言われない状況が暖からしたら一番の拒否に感じるのかもしれない。
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