運命的な出会いには裏がある。
「まあ、本格的に恋する相手を探すのは後にして、今は偶然出会って、良い人がいればって感じかな」

「そのまま独身で生涯を過ごすに5000円」

「勝手に賭けないでよ」


 初音にそうツッコんで、その後も楽しく飲み会は続いた。

 ほろ酔いの気分がいいくらいで帰宅することにして、私はその間夜道を歩く。問題なくマンションのエントランスまで辿り着いて、一階にあるポストに何か入っていないかと見ていた。

 手に取った郵便物で、差出人は誰かなど眺めていると後ろから「あれ、こんばんは」と声を掛けられた。

 その声の方向を見ると今日昼間も見た配達員のお兄さんで驚く。私服姿だったけれど、何度も顔を見たから間違いない。


「え…っと、この時間も配達ですか?」

「あ、いえ。言ってなかったんですけど、俺の家もここです」

「…え!?」


 まさかのドタイプイケメンとマンションが同じなんて、そんなことあるのか。家から出ないからこのマンションの住人なんてほとんど知る訳が無いけど。


「配達中にお客様呼び止めて俺もここに住んでますとか、きもすぎて言えないでしょ」

「それはそう…。でも驚いた。ずっとここに住んでました?」

「そうですね。事業所が移動して、ここの配達区域になってからなので、しばらく経つかも」


 全然気が付かなかった…。


「よろしくお願いします、お隣さん」

「…え、隣?」


 それすらも知らないのは私がどうかしているのかもしれない。

 過去に一度お隣さんが挨拶に来ていてくれたはずなのだけど、それがお兄さんなのかどうか覚えていない。

 あまり人の顔をまじまじと見る方では無いし、配達員のお兄さんの顔を覚えていたのは見る頻度が多いから見るタイミングもあっただけだ。
挨拶で一回見るのと、頻繁に顔を合わせるのではまた訳が違う。
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