運命的な出会いには裏がある。
 ま、そううまくいかないかあ、と深夜に一人、缶ビールを片手にベランダに出て、カシュッといい音を立てて開けるとそのまま喉奥に流し込んで、柵に手をついて月を眺める。

 普段はこんなこともしないけれど、今日は本当にただの気まぐれだった。

 すると隣から煙草の煙が漂ってきて、ふと身体を前のめりにして覗き込むと、あの配達員のお兄さんも柵に肘をついてスマホを眺めながら煙草をふかしていた。

 煙草吸うんだ…、なんて意外に感じながらも「こんばんは!」と声を掛けると、こちらに顔を向けて「ああ、鮎川さん。こんばんは」と昼間とは違う落ち着いた雰囲気で返してくれた。

 私の姿に気づいてすぐ煙草の火を消す。


「煙草、吸うんですね」

「結構。この夜中の時間なら洗濯物干す人もいないし、出てくる人もいないからってベランダで吸ってました」

「意外。あ、私煙草吸わないですけど、いけるので大丈夫ですよ」

「助かります」


 そう言って軽く話をしてから私の手元に視線を移す。


「お酒ですか?」

「はい、明日も休みなんで思いきり飲んでやろうと思って」

「お酒好きなんだ、意外」

「意外かな。結構飲むんですよ」


 そんな会話をすると私が「ちょっと待っててください!」と言いながら、一度部屋に入る。

 冷蔵庫から急いで缶ビールと念のためチューハイをもって再度ベランダに戻ってきた。
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