鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「今日は皆に大事な知らせがある。出社して早々で悪いが、一度作業の手を止めてほしい」

 皆、言われた通りに手を止め、孝仁に注目している。

「後ほど社内全体にもアナウンスが入るが、このたび、社長が企画する社内コンテストが開催されることとなった。コンテストの内容は新商品の企画。しかしながら、部署を問わず応募は可能だ。もちろんマーケティング部からも応募できる。どうか皆も積極的に参加してほしい。詳細は全体アナウンスの方で確認するように。以上だ」

 俄に部内がざわつき始める。

 社長主催という点にも、部署問わず応募可能という点にも驚いているに違いない。梢も大層驚いているが、その意味合いはほかの人らとは少し異なっていた。

 応募すべきかどうかと互いに尋ね合い、戸惑っている様子の同僚たち。そんな中でたった一人だけ、戸惑いを見せずに、むしろ喜んでいる者がいる。

「俺の実力を示すときがきたな! これで昇進は確実。ふはははは」

 永山が腰に手を当て、ふんぞり返りながら笑っている。

(永山さんだけめちゃくちゃ乗り気だ。すっごい自信。まあ、いつものことだけど……でも、このコンテストなら、私も……)

 企画部以外の人間にはかなりハードルの高いコンテストだ。だが、梢には新商品の企画を考えた経験がある。それもごく最近のこと。しかも、企画に対するフィードバックまでもらっている。スーパーエリートである、あの宮沢孝仁に。これはとんでもないアドバンテージだ。

 果たして、これは偶然なのだろうか。最初からこのコンテストのために、孝仁はあの課題を出したのではないだろうか。そうであれば辻褄が合う。あまりにも唐突な課題も、念入りなフィードバックも、すべて繋がる。

 そのことに驚きながらも、孝仁に築いてもらった土台が嬉しくて、心が浮き立つ。永山とも、ほかの同僚とも異なる気持ちで、コンテストに期待を抱く中、梢は「牧野」の声に素早く振り返った。
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