鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~


 梢のデスクに置かれている卓上カレンダー。その左上には『12』の文字が大きく印字されている。

 年末に向け、部内が慌ただしくなる中、梢の心の中はそれ以上に慌ただしい。

 ときめき、戸惑い、不安。そんな様々な感情に支配され、落ち着く暇がない。仕事に集中している間はどうにか平静を保っていられるが、ひとたび手が空けば心が騒ぎ出す。煩わしいくらいに。

 できることならもっと穏やかな気持ちでいたいが、孝仁が梢の心を刺激し続けるせいで、それは叶わない。今や後光が差すレベルで輝いて見える彼は、完全に梢の気になる人になっている。彼が鬼上司であることに変わりはないというのに。

 相変わらず指導は厳しいし、ミスには容赦がない。今でも孝仁のことを恐ろしいと感じる。それでも、その恐怖心を塗りかえてしまうくらいの魅力が孝仁にはある。そう気づかされた。

 きっとスイへの愛を目の当たりにし、さらには自分も優しく撫でてもらったからだろう。徐々に感じ始めていた彼の優しさがはっきりとわかるようになってきた。

 その優しさに気づいてしまえば、惹かれるのは当然。今では孝仁の沼にはまりつつある。

 今日は珍しく朝礼をするという孝仁を自席からぽーっと見つめてしまっている。
< 99 / 118 >

この作品をシェア

pagetop