鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
 梢は酒で軽く口を潤しながら、愚痴の対象になっていた孝仁をちらりと見やる。遠くの席にいるから、向こうの雰囲気まではわからないが、どうやら孝仁以外のメンバーは会話を楽しんでいるようだ。孝仁自身はまったく感情の読めない表情で静かに食事をしている。

 その様子を見ていると、ふと疑問が湧き上がった。

「部長がこういう飲み会に参加してるのって、なんだか意外ですね。仕事以外の付き合いは嫌がりそうなのに。それともこれも仕事のうちっていう考えなんですかね?」

 孝仁はプライベートでの付き合いはいつも避けているように見える。それなのにこの飲み会には参加しているし、なんなら梢に早く行くよう促していた。なんだか矛盾しているように感じる。

 やはり飲み会も仕事という昔ながらの考えを持っているのだろうか。梢はどうにも腑に落ちないと首を傾げる。

「牧野ちゃん、そんなに不思議そうな顔しなくても」
「いや、だって不思議でしょう」
「まあ普段の部長の様子を見てたら、そう思うのも無理はないか。でもね、ああ見えて、宮沢部長は人との繋がりを大切にする人だよ。仕事だからっていうよりは、仲間として見送りに来たって言ったほうが正しいんじゃないかな」
「ええ? 部長がですか?」

 人間関係を疎かにしているとは言わないが、それをことさら大切にしているとも思えない。よくも悪くも冷徹で、仕事に関する成果だけを重視していると言われたほうがしっくりくる。

 どうにも理解しがたいが、篠田の目には孝仁のまた違った姿が映っているようだ。
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