鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「おい、牧野。頼んだ資料はできたのか?」
「っ……今、対応中です」
「ならば、ぼーっとしていないで手を動かしなさい」
「……わかりましたっ」

 いつもの厳しい視線が痛い。梢は不満を抱きながらも、素直に作業を再開する。だが、心の中では孝仁への文句が溢れ出していた。

(嘘だ。絶対に嘘だ。なーにが、『恋人は甘やかしたい質なんだ』よ。甘やかすどころか、鬼モード全開なんですけど……!)

 あまりに理想とは異なる状況に嘆きたくなる。二人の関係はなんなのかと。

 職場で甘やかされることを望んでいるわけではないが、鬼上司の面しか見せてくれないのはいかがなものか。寂しい気持ちが込み上げる。

 だが、これくらいのことで落ち込んでいるわけにもいかない。まだコンテストのアイデアもまとまっていないのだ。孝仁のことばかり考えてはいられない。

 梢は気持ちを切り替えるように軽く頬を叩き、脳内から孝仁を追い出した。
< 120 / 138 >

この作品をシェア

pagetop