鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
 午前の仕事を終え、昼食で英気を養ってから臨んだ午後の会議。次の販売イベントについて、孝仁からゴーサインをもらえたとあって、同僚たちの顔はとても晴れやか。皆、意気揚々と会議室を後にしている。

 梢もそんな彼らの後に続こうと席を立ったものの、すぐに孝仁に呼び止められてしまった。朝の資料の件で話があると。

 渋々孝仁の近くに座り直す。仮にも恋人と密室に二人きりの状況。そわそわとしてしまうのが普通だろうが、これまでの経験上、なにも起こらないとわかっている。

 だから、変な期待を抱くこともなく、一人の部下として孝仁と相対した。

「――以上だ。早めに対応してもらえると助かる」
「わかりました。では、すぐに戻って対応しますね」

 案の定、ほんのわずかも甘い空気にはならず、こちらも淡々と仕事モードで返す。資料のことを頭の中で整理しながら、今度こそ退出しようとドアに向かえば、なぜか再び「牧野」と呼び止められてしまった。

 その場でくるりと振り返る。すぐに重なる視線。彼の視線の鋭さに思わず緊張を覚える。
< 121 / 138 >

この作品をシェア

pagetop