鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「君は相変わらずだな。ここ最近、なにやら不満そうにしているだろ」
「っ」

 予想外の話題に動揺が滲む。不満を抱えているのは確かだが、それは恋人としての孝仁に対してだ。仕事においては、大きな不満は抱えていない。

 プライベートな場ならまだしも、職場で指摘されると返答に困る。

「……いえ」
「嘘を言え。顔に出ているぞ」

 いつものごとく表情から勝手に人の気持ちを読み取る孝仁に、心の中で悪態をつく。

(もうっ! なんでこの人はこうも目敏いの……!)

 少しばかり非難の目を向けていたことは認めよう。だが、あからさまに態度に出したつもりはない。それをこうも易々と見透かされると、もうこの人にはなにも隠し事ができないのではないかと思う。

「一体なにに不満を抱いているんだ? 言ってみなさい」

 口にするまで逃がさないと言わんばかりに凄まれる。

「……会社で話すようなことではないので」
「だったら、会社でそういう顔をするべきではないな」

 冷ややかな言葉が胸に突き刺さる。

(うぐっ……正論。でも、そうやって淡々と言わなくても……部長が原因なのに!)

 孝仁を責めたい気持ちが湧き上がるが、ここで素直に本音を吐けば、さらに冷たい言葉が返ってくるのは明白。今の彼は恋人ではなく鬼上司。プライベートな話はできない。

「申し訳ありません。以後、気をつけます」
「定型の謝罪は結構。いいから理由を言え。言わずに察してほしいというのは赤子のすることだぞ」
「あ、赤子って……そんな言い方しなくても」

 あまりの言いように反論が口をついて出るが、孝仁の威圧的な視線に声がしぼんでいく。

 どうやらこの人は本当に理由を口にするまで逃がしてくれないようだ。早く言えと視線で促してくる。
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