鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「このカトラリーケース、いいですね。蔦の彫刻がとても優美で、惚れ惚れとします」
「ほう、君の目は確かなようだな。それは店主の知り合いの彫刻家が開店祝いに作ってくれたものだそうだ。一流の職人技の賜物だよ」
「職人技……どうりで心惹かれるわけですね。本当に素敵。こういうデザインにこだわったインテリアもいいですよね。うちの会社の商品とは方向性が違うから、仕事ではあまりお目にかからないですけど」

 RIFLAでは機能性を重視した商品を取り扱っているから、デザインはシンプルなものがほとんどだ。市場分析の際も、競合となる商品を中心に調査するため、やはり同系統の商品を目にすることが多い。

「『かゆいところに手が届く』をモットーにしているからな。どうしても機能性にフォーカスを当てることになる。だが、デザインに同様の役割を持たせることができれば、その限りでもない」
「デザインに役割を……一理ありますね。コンテストもその方向性でアプローチしたら面白いかも――って、すみません。せっかくのデートなのに、コンテストの話なんてして」

 仕事ばかりだと不満を持っていたのは自分なのに、ここで仕事の話を持ち出してはデートが台無しだ。自戒して、頭を下げる。

「君のことだ。普段からコンテストのことで頭がいっぱいなんだろ」
「別にそういうわけでは……」
「あー、デートのことでも悩んでいたか」
「っ、それはもう言わないでくださいよ……」

 自分の不甲斐ない部分を蒸し返されて恥ずかしくなる。それを誤魔化すように、手櫛で前髪を整えるふりをすれば、微かに笑う声が聞こえたような気がした。
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