鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「まあ、デートのことはともかく、コンテストのことばかり考えているだろうとは思っていた。君は一点集中型だからな。ほかに意識が向くと、コンテストの方に集中できなくなるんだろ?」
「そんなことはな……くもないかもですけど」

 不器用だと言われてるようで否定したい気持ちもあるが、確かに梢は同時並行で複数のことをこなすのは苦手だ。一つ一つに集中した方が、結果的に効率が上がる。

 どうやら孝仁は正しく梢のことを理解しているらしい。

「ふっ、認めたか。やはり恋人らしく過ごすのはもう少し先になりそうだな。また家に招いてもいいが、コンテストどころではなくなるだろ」

 まるで独り言をつぶやくように囁かれたその言葉は、梢への思いやりに溢れている。

(え……待って、待って。じゃあ、全部私のため? 今まで気づいてなかっただけで、実は甘やかされてたってこと!?)

 おそらくは梢がいっぱいいっぱいにならないよう、あえて距離を保ってくれていたのだろう。やり方が極端な気もするが、急激に距離を縮められていたら、確かにコンテストどころではなくなっていたかもしれない。

「もしかして、今までデートしてなかったのも、私がコンテストに集中できるようにするためですか?」
「あの日の君はまるで茹蛸のようだったからな。加減が必要と思っただけだ」

 孝仁に翻弄されたときのことを掘り返されて、また顔が熱くなる。からかわれているようで少し面白くないが、彼の心遣いは伝わった。やはり梢のことを思って行動してくれていたのだ。
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