鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「もしかして、私に告白させたのも……?」
「私から迫るのは問題があるからな。先に告白してやれなくて悪かった。だが、あの日の言葉に嘘はない。本当に牧野のことが好きだ」

 あの日の孝仁の言葉と今の言葉が重なって、梢の胸を熱くする。少し前まで不安に飲み込まれそうになっていたのに、今はもう孝仁への想いだけでいっぱいだ。

「やっぱり、部長はわかりにくいです……でも、部長の言葉に嘘がないってことはわかります。ごめんなさい。勝手に不安になって、家まで押しかけて……」
「いや、むしろ来てくれてよかった。下手をすれば、こじれていたかもしれないからな。不安にさせて、本当にすまなかった。君への想いは確かなものだから安心していい。とても大切に想っている」

 正面から包み込むようにそっと抱きしめられる。平常な状態であれば、きっとドキドキして落ち着かないだろうが、今ばかりはとても安心する。梢も孝仁の背に腕を回して抱きついた。それを合図にして、孝仁は梢の頭を優しく撫で始める。

「もう不安にならなくていいからな。彩芽さんには恋人がいるとはっきり言っておこう。さすがに、そうとわかれば諦めるだろ。だから、牧野はなにも心配するな」

 守ってくれようとしているのがわかって嬉しい。けれど、それと同時に言いようのないモヤモヤとしたものが心の中で主張を始める。

 孝仁に対応を任せるのは逃げではないかと。彩芽に好き勝手に言われたままでいるのは悔しいのだ。今になって、彩芽に対する闘争心がむくむくと湧き上がっている。

 梢は小さく「待ってください」とこぼす。そして、孝仁から少しだけ体を離すと、決意を持った瞳で彼を真っ直ぐに見つめた。
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