鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
第八章 部長、末永くよろしくお願いします
 三月に入り、今年度も残すところいよいよあとわずか。

 梢は孝仁と会議室に二人きりでいる今の状況を感慨深く思う。

 この一年の間に何度この人に叱られ、そして励まされてきただろうか。初めはあまりの厳しさに泣き言も言ったが、今は少し恋しいと思う。

「おい、牧野。聞いているのか?」
「はいっ、聞いてます!」

 慌てて返答する。今は今年度の振り返り面談中。最後の面談でまで注意を受けるわけにはいかない。

 孝仁から直接指導を受けるのもこれが最後。この人の部下であることに変わりはないが、これから先は今までの教えに従い、自分で考え、行動していかなければならない。

 最後の言葉にはしっかりと耳を傾けておくべきだろう。

「この一年、よくついてきてくれた。イベントのアイデア出しはまだ少し苦手なようだが、経験を積めば変わっていくだろう。最近は意見を口にする癖もついてきたみたいだからな」
「部長に何度も言われてきましたから。それに永山さんを見ていたら、割とどんなことでも言っていいんだなと気づいたと言いますか」

 永山はひやひやするような内容も平気で口にする。孝仁にもしばしば叱責されているが、それでもあの人はへこたれない。その様を見ていたら、自分ももっとタフになった方が仕事がしやすいと気づいた。

「あいつか……永山は少し控えた方がいいくらいだが、牧野にはちょうどいい手本になったようだな。その点においては、永山もいい仕事をしたと言えるか」
「ふふっ、そうですね」

 苦虫を嚙み潰したような顔をしている孝仁がおかしくて笑いがこぼれた。

 こんなふうにこの人の前で笑えるようになるなど、半年前までは考えられなかったのに、今ではこれが自然。それがとても嬉しい。

 孝仁の本質を知ることができてよかったと心から思う。
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