鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「あまり噂は当てにしない方がいいかと」

 冷たく言い放つ。しかし、この程度で永山が怯むはずもなく、まだ梢のそばを離れようとしない。

「いやいや、今回のはただの噂じゃないって。あれだけ目撃情報があるんだ。バレバレだろ」

 この人はどうしてこうもゴシップ好きなのだろう。仕事をしているときよりも、なぜか今の方が目が輝いている。それに反し、梢はきっと死んだ目になっているに違いない。

「永山さん、無駄口叩いてていいんですか? 今朝、部長になにか指示されていませんでしたっけ?」
「うげっ、思い出させないでくれよ……」

 記憶が正しければ、資料作成の類を頼まれていたはずだ。おそらくそういった仕事が苦手だから逃げていたのだろう。

 心底不快な表情をしている永山を見て、少しだけ胸がスカッとする。

「早く仕事に戻ってください。部長に怒られますよ」
「……しかたねえなー」

 永山は大きなため息をつきながら、とぼとぼと自分の席へと戻った。

(まったく、せっかくいい気分だったのに、台無しなんだけど……)

 梢も小さくため息をこぼす。

 孝仁との時間で心を温め、ポジティブな気持ちになれていたのに、永山のせいで気分が下がってしまった。

 今日はただでさえ落ち着かない日。これでは仕事に集中するのも難しいだろう。

 なにしろ明日はコンテストの結果発表日。全力で挑んだ以上、結果が気になるのは当然だ。

 その上、彩芽のことまで考え始めたら、キャパオーバーになる。

 梢は彩芽については考えるべきではないと、あえてコンテストに意識を向ける。

(いよいよ明日かー。うー、ドキドキする。あの企画で大丈夫だったかな……って弱気になったらダメダメ。絶対に最優秀賞取るんだから!)

 鼻息を荒くしながら気合を入れる。それで結果が変わるわけではないが、受け取り方はきっと変わってくるはずだ。

 梢はしっかりと自分を鼓舞し、気分を上げてから仕事へと戻った。
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