鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
 梢はすぐに来た道を戻っていくが、孝仁の様子が心配でちらっと振り返る。

 孝仁はまだ家の中に入っていない。鍵を挿そうとして、それが上手くいかずにガチャガチャと音を立てている。手元がおぼつかなくて、なかなか鍵穴にはまらないようだ。

 しばらく様子を見てみても、鍵が開く気配はない。それがじれったくて、梢は孝仁のそばまで戻った。

「ああ、もうっ! 鍵、貸してください」

 カチャリという音とともに開く玄関の鍵。梢は孝仁に鍵を返すと、ドアを開けて中へ入るよう促した。

 孝仁はそれに素直に従ってくれる。だが、玄関で靴を脱ぐや否やその場に座り込んでしまった。

「ちょっ、部長? ちゃんと部屋の中に入ってください」

 梢の声は届いていないらしい。孝仁はまったく動こうとしない。

(ええ……もうこのまま放置でもいいかな? これで風邪引いても自業自得だよね)

 心の中でそんな悪態をついてみても、実際には放置できない。心配性な性格が邪魔をして、結局は世話を焼いてしまう。

「はあー、なんで私がここまで……後で文句言わないでくださいよ。お邪魔しますからね!」

 梢は渋々靴を脱ぐと、孝仁の家の中へと入った。

 自分の鞄は玄関に置き、どうにかこうにか孝仁を立たせて、リビングまで移動する。本当は寝室に運んだ方がいいのかもしれないが、あまり人の家の中を好き勝手歩かない方がいいだろう。

 幸い、リビングにはソファーがあったから、ここに寝かせておけば十分だと思うことにした。
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