鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
 孝仁をソファーに座らせ、今度こそ大仕事を終えたと息をつく。

「ふぅー、疲れた」

 そのときだった。突然、背後からカタカタという音が鳴り響いたのは。

「……え? なに?」

 一瞬、家族の存在を考えるも、それはないだろうとすぐに打ち消す。ここに運ぶまでに、それなりに物音を立てていた。家族がいたなら、物音に気づいて顔を出しているはずだ。

 梢は恐る恐る音の出どころを探る。不規則に鳴っている謎の音はどうやらリビングに続く部屋の中からしているようだ。

 仕切りとなっている引き戸は開いている状態だが、電気が消されているから中はよく見えない。だが、間違いなくその部屋の中からなにかの音が響いてきている。

(不審者だったらどうしよう。いや、もしかしたら霊的なやつ? どっちも無理なんだけど……)

 今すぐに逃げ出したいが、あの状態の孝仁を置いて行くわけにもいかない。本当に不審者だったら、命すら危ういかもしれないのだ。

 梢は息を殺し、そーっと隣の部屋へと近づく。引き戸の陰に隠れるような格好になり、顔だけを出して部屋の中を覗き込んだ。

「ん?」

 暗闇に目が慣れていないせいではっきりとはわからないが、床に置かれたケースのような物から音がしている。少なくとも不審者がいる感じはしない。

 梢はより至近距離で確かめようと、床にしゃがんでケースらしきものをじっと見つめてみた。

 小さななにかがケースの中で動いている。そのなにかをさらにじっと見つめる。そうして見つめること数秒後。その正体を認識した梢は一瞬にしてハートを射抜かれた。
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