鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「っ!?」

 突然、自分の頭に訪れた予想外の感触に、ピシっと体が硬直する。

(えっ? は? なにこれ!?)

 髪の毛に沿うようにして、上から下へ頭を撫でられている。ほどよい力加減がとても心地いいが、それに浸る余裕はない。この感触をもたらしているのがこの男以外にあり得ないという状況に気が動転している。

「よしよし。いい子だな、スイ」

 あまりに優しい声音に恐怖すら覚える。孝仁のこんな声は未だかつて聞いたことがない。別の誰かが発していると言われた方が納得できる。

 しかし、この部屋には梢と孝仁とかわいいうさぎしかいないのだ。梢もうさぎもこの低音ボイスは出せないから、やはり孝仁が発した声にほかならない。

 夢ですら起きるとは思えないこの状況に、梢は驚きやら恐怖やらの忙しない感情に襲われるが、孝仁はそんな梢の様子に構うことなく、頭を撫で続ける。

(無理、無理、無理! 急になでなでは意味がわからない! スイって誰? このうさぎのこと? いやいや、待ってよ。どう見ても私はうさぎじゃないでしょうがっ!)

 冷静に分析するならば、孝仁はうさぎと勘違いして梢を撫でていると考えるのが妥当だろう。だが、いくら酒に酔っているとはいえ、その勘違いはひどすぎる。

 直ちにこの間違いを正さねばならない。
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