鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「だよなー。でも、牧野さんがいてくれて本当助かったよ。ありがとうな。あの後、大丈夫だった? まあ、酔ってたとはいえ部長だし、なにも問題は起きないよな」
「……」

 能天気な永山にむかっ腹が立つ。梢の身に起きたことを知らないとはいえ、問題は起きないなどとよく言えたものだ。こちらは大問題に直面したというのに。

 苛立ちから黙りこくる梢を見て、永山はハッとした表情を浮かべている。

「えっ、まさか問題あ――」
「ありません! ありませんから! でも、一人で送るのは大変だったんですからね」

 さすがに変な誤解が生じては困る。この人に勘違いをされたら、あらぬ噂が立たぬとも限らない。ここは強めに否定しておくのが正解だろう。

 あの日の出来事を愚痴ってやりたい気持ちもあるが、それもしない方が身のためだ。上司に頭を撫でられたなどと言えば、梢自身が恥ずかしい思いをするのだから。

「本当に悪かったって。ごめん! この通り!」

 永山は両手を合わせ、頭を下げている。謝罪の気持ちを示しているのだろうが、この人がやっても、ただのパフォーマンスにしか見えない。

「本当に反省してます?」
「してる、してる! そうだ、お詫びに――」
「おい、なにを入り口で騒いでいる?」

 鼓膜が痺れるほどの低音ボイスが永山の言葉を遮った。今、一番聞きなくなかった声に、梢の背筋は瞬時に凍る。
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