鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「すまない。なにかしてしまっただろうか? 本当になにも覚えていないんだ。遠慮なく言ってくれ。必要な償いはきちんとする」
「いえ! なにも! なにもありません。ただ、うさぎがいたことに驚いただけで」

 さすがに頭を撫でられたなどと言えるわけがない。孝仁が覚えていないなら、あの出来事は闇に葬り去るのがいい。

 梢は目をかっぴらき、その視線でなにもなかったと強く主張する。

「そうか。それならいいが……その、私がうさぎを飼っていることは誰かに話しただろうか?」
「いえ、誰にも話していませんが」
「わかった。では、申し訳ないのだが、そのまま誰にも言わないでいてほしい。どうか他言無用で頼む」

 攻守交代したかのように、今度はこちらが鋭い視線を送られる。もしもこの視線を無視して否と答えたなら、明日の命はないかもしれない。

「い、言いません。誰にも言いません……!」

 肯定の言葉を聞いた孝仁はようやくその鋭い視線を梢から外してくれる。そのことに安堵したからだろうか。梢の口から思わず本音が漏れ出た。

「別に、そんなに隠さなくても大丈夫だと思いますけど」

 うさぎを飼うことはなんの罪にもならない。特に隠し立てする必要はないだろう。

 その考えは至極当然のもののはずだが、鬼上司とうさぎという組み合わせにおいてはその限りではないようだ。

 再び孝仁から鋭い視線が飛んでくる。いや、ぎろりと睨まれている。
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