鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「だったら、さっさと行け。それは後に回して問題ない。牧野はほとんど関わりがなかっただろうが、君もマーケティング部の一員として、ちゃんと送り出しの場にはいなさい」

 今日の会で送られるのは長年マーケティング部で働いてきた富田(とみた)という女性社員だ。家庭の事情での退職と聞いている。

 梢は半年しか関わりがなかったが、孝仁の言う通り、もちろん送り出しの場にはいるつもりだ。

「はいっ! すぐに準備して向かいます!」

 勢いよく返事をすれば、孝仁は軽く頷いている。今度こそ納得のいく返答ができたようだ。

「私は先に行く。ちゃんと戸締りしてから来い」
「承知しました!」

 その返答を聞いた孝仁は、もうここに用はないと言わんばかりに、さっさとフロアを出て行った。

 ようやく恐怖の対象から解放された梢は緊張を解いて力なくデスクに突っ伏す。

「……はあー、怖かったー。急に背後から声かけるの本当にやめてほしい。心臓に悪すぎでしょ。あの鬼、にこりともしないし。もうちょっと愛想よくしてくれたって……って、ゆっくりしてる場合じゃない。急がないとまた怒られる」

 またあの恐ろしい視線を向けられたら、たまったものではない。

 梢は作成中だったファイルを保存し、急いで会社を出る準備をする。もちろん戸締りも忘れない。もしも忘れようものなら、明日は地獄を見ること間違いなしだ。

 フロア全体を見て回り、窓の施錠などに問題がないことを確認する。忘れ物がないことも確認して会社を出ると、全速力で送別会の会場へと赴いた。
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