鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「いらっしゃいませー」
店員の威勢のいい声が鼓膜を揺らす。居酒屋の店内は仕事帰りの客でごった返していてガヤガヤと騒がしい。店員の声が大きくなるのも道理と言えよう。梢が予約者の名を伝える声も自然と大きくなった。
入口から見える範囲に広がるたくさんのテーブル席。その隙間を縫うようにして、店員の後を歩く。右からも左からも騒がしい声が聞こえてくるが、少し奥の方まで進めば、くぐもった声が正面から聞こえてきた。
目の前に現れたのは幾枚かの襖。その襖の先から声が漏れている。中を覗いてみれば、小上がりになった座敷が広がっており、見知った顔がその空間を埋めていた。
つい先ほどまで一緒に仕事をしていたマーケティング部の面々が楽しそうに談笑している。飲み物が運ばれている様子からして、乾杯を待っているところだろう。
席はどこもかしこも埋まっている。会社を出るときに、ほかに誰も残っていなかったことを考えれば当然だが、ここに到着したのは梢が最後のようだ。
それでもどこかに空席はあるはずだと、端から端まで目線を動かす。そうすれば、右端にわかりやすくスペースがあるのが目に入った。
場の空気を乱さぬよう、ささっとその場所まで向かおうとするが、梢の足はたったの数歩で止まってしまう。
(げっ、部長……)
向かおうとしている席の隣に孝仁が座っている。よくよく見てみれば、その場所だけ通夜のように静まり返っているではないか。とても飲み会の雰囲気とは思えない。どう考えても孝仁がその場にいるせいだろう。
この一週間、鬼のしごきに耐えてきたのに、金曜の夜にまで鬼と時間をともにせねばならないのか。梢はことさら大きく肩を落とす。
先ほどとは打って変わって、足取り重く孝仁の方へ向かおうとすれば、そのタイミングで天使の声が降り注いだ。
店員の威勢のいい声が鼓膜を揺らす。居酒屋の店内は仕事帰りの客でごった返していてガヤガヤと騒がしい。店員の声が大きくなるのも道理と言えよう。梢が予約者の名を伝える声も自然と大きくなった。
入口から見える範囲に広がるたくさんのテーブル席。その隙間を縫うようにして、店員の後を歩く。右からも左からも騒がしい声が聞こえてくるが、少し奥の方まで進めば、くぐもった声が正面から聞こえてきた。
目の前に現れたのは幾枚かの襖。その襖の先から声が漏れている。中を覗いてみれば、小上がりになった座敷が広がっており、見知った顔がその空間を埋めていた。
つい先ほどまで一緒に仕事をしていたマーケティング部の面々が楽しそうに談笑している。飲み物が運ばれている様子からして、乾杯を待っているところだろう。
席はどこもかしこも埋まっている。会社を出るときに、ほかに誰も残っていなかったことを考えれば当然だが、ここに到着したのは梢が最後のようだ。
それでもどこかに空席はあるはずだと、端から端まで目線を動かす。そうすれば、右端にわかりやすくスペースがあるのが目に入った。
場の空気を乱さぬよう、ささっとその場所まで向かおうとするが、梢の足はたったの数歩で止まってしまう。
(げっ、部長……)
向かおうとしている席の隣に孝仁が座っている。よくよく見てみれば、その場所だけ通夜のように静まり返っているではないか。とても飲み会の雰囲気とは思えない。どう考えても孝仁がその場にいるせいだろう。
この一週間、鬼のしごきに耐えてきたのに、金曜の夜にまで鬼と時間をともにせねばならないのか。梢はことさら大きく肩を落とす。
先ほどとは打って変わって、足取り重く孝仁の方へ向かおうとすれば、そのタイミングで天使の声が降り注いだ。