鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「牧野が意見する日を楽しみにしている」

 その言葉を残して孝仁は去って行く。その去り際の表情が脳にこびりついて離れない。ほんの一瞬ではあったが、強烈なインパクトがあった。

 なぜなら、孝仁が梢に向かって微笑みを見せたのだから。

 胸の奥の方で音が鳴る。キュンと――

(って、なに自分の心に効果音つけてんだ、私……! もう、不意打ちの笑顔はダメだって。こんなの反則でしょ……鬼と見せかけて、部下思いなんてズルすぎる)

 孝仁の印象が変わりすぎて、心が忙しない。なでなで事件以来、デレを発動しすぎだ。

 あの事件は酔っていたせいだとまだ割り切れたが、素面で優しくされるとどうにも落ち着かない。少しずつ、でも確実に、孝仁に惹かれている。だが、そう簡単に絆されたくはない。

 梢はギャップに驚いただけだと己に言い聞かせ、甘く鳴り響いた心の音には気づかないふりをした。
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