鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
第四章 部長、心臓が壊れてしまいます
 光の粒を纏っているかのようにキラキラと輝くその場所。なぜかそこだけが周囲よりも一段明るい。

 照明はきれいに全体を照らしているし、曇天の今日、窓からの光はほとんどない。そんな状況で、特定の場所だけ明るくなるはずはないが、梢の目にはそこだけが輝いて見える。

 目を覆いたくなるほどの眩しさはなく、内なる美しさを際立たせてくれるような淡い光。

 ゲームやアニメで人物を輝かせるときに用いられる光のエフェクトといえば伝わるだろうか。そのキラキラエフェクトがなぜだか孝仁にだけかかっている。

 いくら強い光でないとはいえ、特定の場所だけが光っていれば自然と目がいくもので、梢は先ほどからちらちらと孝仁を見てしまう。

(もう、なんなのこれ……部長が一割増し、いや、二割増しはかっこよく見える)

 謎の光のせいだろうか。あの鬼が素敵に見えて困る。普段は恐ろしく感じる鋭い目つきでさえ、今は色っぽく見えてしまうから重症だ。

 梢はデスクに肘をつき、組んだ両手の上に顎を乗せて、小さく息を吐く。もちろん視線は孝仁に向けたまま。

 視線の先の彼はなにやら部下の相談に乗っている様子だ。

「――のことか? そのカタログで――」

 会話の内容まではわからないが、孝仁のものとわかる程度には声が聞こえてくる。

(なんだか声まで素敵に聞こえてくる……)

 いつもならば、あの低温ボイスにも恐怖を覚えるのに、今は心地よく痺れるような感覚しかなくて、ますます梢の意識は孝仁の方へと吸い寄せられる。

 仕事をしては孝仁を見て、また仕事をしては孝仁を見て。それを何度も繰り返す。

 そうして、同じことを繰り返すうちに、その比重は徐々に孝仁へと傾き、いつの間にやら梢は彼だけをがっつりと見つめていた。
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