鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「その……言いたいことはですね……えー、まあなんと言いますか……」
「もごもごするな。簡潔に答えろ!」
「ひっ!? と、特にありません」

 孝仁の口から盛大なため息が漏れる。

「それならばきょろきょろするな。業務に集中しろ」
「うっ……すみません」

 こんなことで注意されるとはまるで新人のようで恥ずかしい。とても居たたまれない。

 梢が縮こまって反省を示せば、孝仁はなにやら含みのある視線を寄こしてくる。

「よそ見をする余裕があるくらいだ。当然課題は終わったんだろうな?」
「は、はい! 最終チェックが終わったら提出できます!」

 何度も首を縦に振って、今の言葉が事実だと強調する。

「最終確認は終わっていないと」
「それは……はい」
「まあいいだろう」

 ギリギリセーフだと胸を撫でおろす。午前中に十本目の企画を仕上げた自分を褒めてやりたい。

 だが、そもそも孝仁を目で追い始めたのは、一段落ついて気が緩んでしまったせいだ。そう考えると、このタイミングで企画を仕上げたことは果たしてよかったのか、悪かったのか。

 少しばかり疑問に思うが、少なくとも今の詰問をやり過ごせたのだから、よかったと結論づけていいだろう。

「もう席に戻れ。戻って、さっさと課題を提出しなさい」
「はいっ! 失礼しますっ!」

 梢はピシっと両足を揃え、姿勢を正してから、軽く礼をする。それから、くるりと回れ右をすると、振り返らずに席へと戻った。
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