鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
 席に着くと同時に項垂れる。

(なにやってんだろう、私……これじゃあ、部長をぎゃふんと言わせるどころか、私が言わされてるよ)

 せっかく課題をやりきったというのに、くだらないことで叱られるとは本当に情けない。

 己の行動を振り返り、反省から沈んだオーラを放っていれば、通りすがりの永山にポンと肩を叩かれた。

「わかる。わかるよ。今日は社長が来てたもんな。そわそわして当然だ」
「は、はあ……?」

 いまひとつ永山の言いたいことがわからない。

 確かに、今日は珍しく社長がマーケティング部に顔を出していたが、孝仁と少し話をしていただけで、すぐに去っていた。

 社長がここにいる間ならいざ知らず、いない今のタイミングでそわそわするはずがない。

「俺も今日は落ち着かなくてさ。社長のあの感じ、絶対に昇進の話だと思うんだよな。俺は宮沢部長がさらに出世するものと見た。そして、空いた部長のポストには――ふっ、はははは」
「あー、ははは……」

 梢の口からはもはや乾いた笑いしか出てこない。

(ない、ない。そんなことあるわけないから。仮に、部長のポストが空いたとしても、そこに就くのは絶対に永山さんじゃないし。なんかこの人見てたら、自分がマシに思えてきたや)

 実際に社長と孝仁がどのような話をしていたかはわからない。だが、昇進に関する話をこんなにもオープンな場所でするはずがないだろう。

 そもそも永山が部長職に就けるとは到底思えない。彼よりも優秀な人間はほかにいるのだ。わざわざ永山を選ばないだろう。

 きっと永山以外の人は同じことを思うはず。それなのに、本人だけがこうも己を評価しているとは、この人のポジティブさには呆れを通り越して、恐怖すら覚える。
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