鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
第五章 部長、あなたが好きです
わずかにやわらかさを帯びた切れ長の目と、薄い唇から発される低く穏やかな声。
ずっと冷たいと感じていたそれらが、今は百八十度違って見え、梢の顔は締まりなく緩む。
「ふふっ……ふふふ」
非常にだらしのない顔になっているが、己の姿に気を遣う暇はない。彼の姿を追うので忙しい。
「おーい、牧野ちゃん。戻っておいで―。こぼすよー」
篠田の声で現実へと引き戻され、脳内の彼はあっという間に消え去ってしまった。代わりに、梢の目に映し出されたのは今にも箸から落ちそうになっている肉野菜炒め。
「……あっ! すみません」
箸でつまんでいたキャベツを慌ててぱくりと口に運ぶ。あと少し遅ければ、このキャベツは梢の口には届かなかっただろう。向かいに座る篠田にぺこぺこと頭を下げる。
キャベツを救ってもらった礼の気持ちはもちろんのこと、彼女への非礼を詫びる気持ちからそうしていた。
なにしろ今は篠田とのランチ中。その時間を差し置いて、一人妄想に耽っていたとなれば、謝罪は必然だ。
「すみません。ぼーっとして」
「別にいいけど、なにかあったの? 随分、嬉しそうな顔してたけど」
「それはー、まあ……ふふふ」
また彼の姿を想像して、にやけてしまう。
「えー、なになに? 教えてよ」
「いや、そんな大したことじゃないんですよ。今日、部長が――」
梢は午前中の出来事を振り返りながら語り始める。
それは本当にささやかで、けれど、梢にとってはとても嬉しい出来事だった。
ずっと冷たいと感じていたそれらが、今は百八十度違って見え、梢の顔は締まりなく緩む。
「ふふっ……ふふふ」
非常にだらしのない顔になっているが、己の姿に気を遣う暇はない。彼の姿を追うので忙しい。
「おーい、牧野ちゃん。戻っておいで―。こぼすよー」
篠田の声で現実へと引き戻され、脳内の彼はあっという間に消え去ってしまった。代わりに、梢の目に映し出されたのは今にも箸から落ちそうになっている肉野菜炒め。
「……あっ! すみません」
箸でつまんでいたキャベツを慌ててぱくりと口に運ぶ。あと少し遅ければ、このキャベツは梢の口には届かなかっただろう。向かいに座る篠田にぺこぺこと頭を下げる。
キャベツを救ってもらった礼の気持ちはもちろんのこと、彼女への非礼を詫びる気持ちからそうしていた。
なにしろ今は篠田とのランチ中。その時間を差し置いて、一人妄想に耽っていたとなれば、謝罪は必然だ。
「すみません。ぼーっとして」
「別にいいけど、なにかあったの? 随分、嬉しそうな顔してたけど」
「それはー、まあ……ふふふ」
また彼の姿を想像して、にやけてしまう。
「えー、なになに? 教えてよ」
「いや、そんな大したことじゃないんですよ。今日、部長が――」
梢は午前中の出来事を振り返りながら語り始める。
それは本当にささやかで、けれど、梢にとってはとても嬉しい出来事だった。