至上最幸の恋
 いや、いちいち細かいことを考えるのはやめよう。エリサが心を込めて用意してくれたティータイムを、純粋に楽しまないとな。

 空が少しずつ茜色に染まってきた。黄昏時の美しさは、万国共通だ。

 どうしたら、この景色を筆で表現できるのだろう。この目で見た色を、画面にどう描くのか。何年も向き合っていることだが、明確な光は、まだ見えていない。

 果たして、死ぬまでに見つけられるのだろうか。

「いい天気ですね」

 エリサの涼やかな声で、意識が現実に引き戻された。

「そうだな。荒れた景色も、それはそれで味があるんだろうけどな」
「ええ。どんな景色にも、それぞれの色がありますわ。今日みたいな青空でも、泣き出しそうなねずみ色の空でも、そのときそのときで見える色や聞こえる音が違います」

 なんとなく感覚が合う。初めてそう感じた。
 彼女の感性は、創作意欲をかき立てる。たとえオレたちの未来がつながっていなくても、この出会いが有意義なものであるのは間違いないのだと思うことにした。

 それからエリサは、ウィーンでの生活についていろいろと話してくれた。

 地下鉄がよく遅延するということ。野菜や果物は量り売りが主流だということ。そして、近所のスーパーが日曜日は閉まっていること。
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