至上最幸の恋
「東京とはなにかも違っていて、ワクワクしました。知らない世界と出会うのは、とても楽しいことですから」

 どうやらエリサは、新しい場所で感じる不安よりも、それを楽しむ気持ちのほうが大きいらしい。そういう前向きな姿勢は、非常に好感が持てる。
 
「ウィーンには穏やかな方が多くて、毎日を丁寧に暮らしている印象です。東京とは、まったく違う魅力がある街ですね」
「こっちのほうが好きか?」
「東京も好きですよ。新しいもので溢れていて、楽しいです」

 きっと彼女は、どのような環境でも良さを見つけて楽しめるのだろう。人混みでも悪天候でも、明るく笑っていそうだ。

 最初は少し変わった女だと思ったが、自分の心で感じたことを大切にしているんだな。そういうところは、オレと似ているのかもしれない。

「瑛士さんは、なぜ旅をなさっているのですか?」

 シフォンケーキを食べ終わると、エリサが尋ねてきた。

「ルーブル美術館がきっかけだな」
「行かれたことがあるのですか?」
「あぁ。最初の海外旅行がパリだった」

 日本画の展示はなくても、芸術の道を志す人間として、一度はルーブル美術館を見ておきたい。
 そう思って、受験が終わった高3の春休みに、貯金をつぎ込んでフランスを旅行した。
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