至上最幸の恋
「ひとりで帰れるか?」
「ええ。近くなので、大丈夫ですわ」

 両手にカゴを持って、エリサが立ち上がった。薄暮の中でも、彼女のブロンドは美しく輝いている。

「気をつけてな」
「はい、ありがとうございます」

 恭しく頭を下げたものの、エリサはその場から離れようとしない。少し俯いて、口を真一文字に結んでいる。

「どうした?」
「なんだか足が重くて。こちらへ来るときは、とても軽かったのですが……」

 名残惜しいのは、オレも同じだった。
 エリサとの会話は、単純に楽しい。妙にインスピレーションを刺激するし、なにより彼女の声が心地よかった。

「……明日も会うだろ」
「そう、ですよね。また明日も、お会いできますものね」
「約束したしな」
「はい、約束いたしました!」

 また明るい笑顔に戻る。くるくるよく変わる表情は、見ていてまったく飽きない。

「それでは、また明日もこちらで。楽しみにしております」
「ああ。15時だな」
「はい!」

 また頭を下げて、今度こそエリサは家路についた。跳ねるような足取りだった。
 そして姿が見えなくなるギリギリのところでこちらを振り返り、大きく手を振る。

「子どもか」

 思わず呟きながらエリサに向かって手を上げたところで、贈り物を渡し忘れていたことに気がつく。

 まぁ、明日渡せばいいか。今度こそ忘れないよう、最初に渡そう。

 そんなことを考えながら、ホテルへ戻った。
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