至上最幸の恋
「日本では、かなり雨が降るのか?」
「そうだな。梅雨もあるし」
「そうか。どんな景色になるのか、見てみたいな。いつか必ず、日本にも行くよ」

 ラウロは、以前から日本に強い関心があるそうだ。最低でも1年は滞在して、四季の景色をカメラに収めたいらしい。

 オレは絵で、彼は写真で、自然の美を表現する。手法が異なるだけで、根底にある情熱は同じだ。

 互いの連絡先は交換しているし、ラウロが日本に来たときは、美味い寿司屋にでも連れて行ってやるか。回る寿司だけどな。

「俺が日本へ行くころには、エイシも結婚しているかもしれないね」
「まさか。彼女とは別に」

 しまった。口を滑らせた。案の定、ラウロはにやにやしている。

「彼女? 誰のことだ?」
「いや、気にすんな」
「俺は『誰と』結婚しているかは、言わなかったんだけどなぁ」

 完全な失言だ。エリサとの待ち合わせのことを考えていたから、つい口から出てしまった。

 それ以上は墓穴を掘りそうなので、ラウロを無視して、自分のカメラを手入れすることにした。

 そもそもこれまで、結婚なんて考えたことはない。胸を張って画家だと言えるほどの作品を描いておらず、なにより養っていける財力がない。自分が食っていくので精一杯だ。
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